有機化合物の立体を考えるのって結構難しいですよね。
そこで今回はその中でも特に難しい環状化合物のキラリティーについて解説していきたいと思います!
目次
- 2置換シクロヘキサンのキラリティー
2置換シクロヘキサンのキラリティー
以下の6つのジメチルシクロヘキサンについてどの化合物がキラルかわかるでしょうか?

メチル基が紙面手前側に伸びていたり、後ろ側に伸びていたりとなかなか簡単には判断できなさそうです。
それでは一つ一つ確認していきましょう。
シス-1,2-ジメチルシクロヘキサン
まずはシス-1,2-ジメチルシクロヘキサンについてみていきます。

与えられた化合物のキラリティーを判断するために鏡に映した構造を図示しました。
これらを重ね合わせることができない場合はキラルとなるわけですが、どうでしょうか。
鏡に映した構造を180°反転させてみてください。

同一となることが分かりますね。つまりシス-1,2-ジメチルシクロヘキサンはアキラルであることがわかります。
このように不斉炭素を有していながらキラリティーをもたない化合物をメソ化合物と呼びます。
メソ化合物については以下の記事で詳しく説明していますのでよかったらご覧になってください。
シス-1,3-ジメチルシクロヘキサン
続いてシス1,3-ジメチルシクロヘキサンについてみていきます。

先ほどと同様に鏡に映した構造を図示しました。
つぎにこれを反転させてみます。

同一化合物となることが分かりましたね。
すなわちシス-1,3-ジメチルシクロヘキサンもメソ化合物、つまりキラリティーをもたないことが分かりました。
シス-1,4-ジメチルシクロヘキサン
どんどんいきます。次はシス-1,4-ジメチルシクロヘキサンについてです。
と言いたいところですが、この化合物そもそも不斉炭素がないのでキラリティーをもちません。

不斉炭素があるかないかは以下のような手順で判断します。

1の炭素が不斉炭素であるか判断するために1から6まで各炭素に番号を振りました。
2と6が異なる場合は不斉炭素となるわけですが、同じメチレンなので次の3と5を見るわけですが、これも同じメチレンです。
結局最後の4の炭素は2からみても6からみても同じ順位にありますので、2と6は同一であることになります。
つまり、1は不斉炭素とならないことがわかります。

先ほど解説した1,3-ジメチルシクロヘキサンは3にメチル基が生えているため、1の炭素からみて同じ順位にある3と5の炭素が異なること分かります。
つまり1の炭素、また同様に3の炭素が不斉炭素となるわけです。
1,2-ジメチルシクロヘキサンについても同様に不斉炭素をもちます。
トランス-1,2-ジメチルシクロヘキサン
トランス体へとうつります。

鏡に映した構造を反転させてみます。

今回は同一となりません。つまりトランス-1,2-ジメチルシクロヘキサンはキラル化合物であることが分かりました。
トランス-1,3-ジメチルシクロヘキサン
どんどんいきます。次はトランス-1,3-ジメチルシクロヘキサンです。

鏡に映した構造を図示したら、それが同一となるか判断していきます。

先ほど同様、どこからどうみても同一にはなりません。つまりトランス-1,3ジメチルシクロヘキサンもキラルであることが分かりました。
トランス-1,4ジメチルシクロヘキサン
シス-1,4-ジメチルシクロヘキサンと同様に不斉炭素を持たないためキラルではありません。
まとめますと

となります。
いかがだったでしょうか。
私は空間認知能力が低いので、キラリティーの判断の際には今回の様に一度鏡に映した構造を書いて同一となるかならないかを判断するようにしています。
ぜひ参考にしてみてください。