有機化学の王道の反応であるフリーデルクラフツ反応について、テストや大学院入試で問われる部分に焦点を当てて解説していきます。
5分程度で読み切ることができるので、テスト前の確認などに役立てていただけると幸いです。
フリーデルクラフツ(Friedel-Crafts)反応とは
フリーデルクラフツ反応とは芳香族求電子置換反応の一種で、アルキル化、アシル化の2つが存在します。
- アシル化

- アルキル化

反応機構は以下に示すようになります。
アシル化

反応は酸塩化物からアシルカチオンを生成させることから始まります。
ここでは酸塩化物よりも活性の高いアシルカチオンを生成させるために塩化アルミニウムを用います。
塩化アルミニウムはルイス酸であるため、酸塩化物中の塩素がもつローンペアを受け取ることができます。
その後、塩素がアルミニウムにもっていかれるように結合が解離しアシルカチオンが生成します。

続いて先ほど生成したアシルカチオンとベンゼンが反応します。
まず酸塩化物よりも高い求電子性を示すアシルカチオンにベンゼン環のπ電子が求核します。
続いてアシルカチオン生成時に複製した塩化アルミニウムイオン(AlCl4-)が上の図のようにプロトンを引き抜くことで目的生成物と塩化アルミニウムが再生します。
アルキル化

アシル化同様に反応は塩化アルミニウムなどのルイス酸を用いて、アルキルクロリドから活性の高いアルキルカチオンを生成させることから始まります。

続いて先ほど生成したアルキルカチオンとベンゼンが反応します。
アシル化同様にベンゼン環のπ電子がアルキルカチオンに求核し、塩化アルミニウムイオンがプロトンを引き抜くことで目的生成物と塩化アルミニウムが再生します。
テスト、院試で問われるポイント
アシル化
フリーデルクラフツアシル化で問われるポイントは以下の一点です。
当量以上のルイス酸を必要とすること

反応機構を見てわかるように反応終了後、塩化アルミニウムが再生しています。
そのため塩化アルミニウムはほんの少しの量(触媒量)でもよいはずです。
しかしアシル化においては触媒量では反応が完結しません。
なぜなら以下の様に、生成物のカルボニル酸素のローンペアがせっかく再生した塩化アルミニウムに配位してしまうためです。

配位後のアルミニウムは4つの結合手をもつため、電子を受容できる空の軌道が存在しません。
この理由からフリーデルクラフツアシル化では当量以上のルイス酸を必要とします。
アルキル化
フリーデルクラフツアルキル化で問われるポイントは以下の一点です。
ハロゲン化第一級アルキルには利用できない

上に示すようにハロゲン化第一級アルキルに本反応を適用することはできません。
なぜなら以下に示すようにハロゲン化第一級アルキルから生成する中間体の一級カルボカチオンは不安定であり、すぐに二級、三級カルボカチオンへと転移してしまうためです。

結果、二級カルボカチオンや三級カルボカチオンが反応し、目的生成物はほとんど得られません。
※合わせて覚えておきたい
ハロゲン化第一級アルキル由来の目的生成物を得るにはフリーデルクラフツアシル化を利用します。

アシル化による生成物をWolff-Kishner還元などの還元反応によって処理することで所望の生成物を選択的に得ることができます。
アシル化 × アルキル化
アシル化とアルキル化の反応性の違いについても問われることが多いです。
ポイントは以下の一点です。
アシル化の方が反応を抑制しやすい

アシル化生成物と、アルキル化生成物を見比べると、官能基の違い(青、赤)によって芳香環の電子密度が異なることが分かります。
すなわち青で示したアシル基は電子吸引性であるため芳香環の電子密度を低下させ、赤で示したアルキル基は電子供与基であるため芳香環の電子密度を高めます。
電子密度の低下したアシル化生成物では多重置換反応が進行しないが、電子密度が向上したアルキル化生成物では以下に示すように多重置換が進行してしまうことが問題です。

まとめ
フリーデルクラフツアシル化とアルキル化について、テストや大学院入試で問われるポイントをまとめました。
どちらの反応にも長所短所があり、使い分ける上でもそれぞれをしっかり押さえておく必要があります。
信頼性の高い反応であるため、研究室でもよく使用します。
研究室配属前に確認しておくのもよいかと思います。