テストに頻出の「芳香族求電子置換反応、芳香族求核置換反応」を最短でマスターする!

芳香族求電子置換反応と芳香族求核置換反応は、ベンゼン環などの芳香族化合物を官能基化させる代表的な反応です。これらには非常に多くの反応が含まれており、どこまで覚えればよいのか頭を抱えている方も多いかと思います。

そこで今回はテストや大学院入試によく出題される部分に的を絞って解説していこうと思います。

目次

  • 芳香族求電子置換反応と芳香族求核置換反応とは?
  • 覚えるべき4つの芳香族求電子置換反応
  • 覚えるべき3つの芳香族求核置換反応

芳香族求電子置換反応と芳香族求核置換反応とは?

まずはこれらの反応がどういったものなのか確認していきます。

芳香族求電子置換反応

まずは芳香族求電子置換反応から。芳香環上のπ電子が求電子種(E+)に求核しプロトンが脱離することで進行します。

芳香族化合物が求核しているのに名前がややこしいと何度思った事か。。。

それはさておき芳香族化合物はπ電子の非局在化により安定化されているため、活性の低い求電子種とは反応しません。次項で詳細について解説していきます。

続いて芳香族求核置換反応。

芳香族求核置換反応

先ほどとは対照的に芳香環に対して求核種(Nu-)が求核し脱離基(X)が脱離することで進行します。

芳香環はπ電子でおおわれているため直感的に起こらなさそうな反応ですが、R部位に電子求引基を導入するなど特殊な条件下で起こったりします。こちらも後ほど解説します。

覚えるべき4つの芳香族求電子置換反応

芳香族求電子置換反応では、芳香族化合物の安定性から活性の低い求電子種とは反応しないことを述べました。

ここでは大学院入試に頻出する活性の高い求電子種を用いた4つの反応を紹介します

ニトロ化

芳香族求電子置換反応といえばニトロ化といわれるくらい頻出の反応です。求電子種として用いられるNO2+は活性が高く、安定に存在することができません。

そのため以下に示すように硫酸と硝酸を反応させることで系中で発生させ使用します。

とっつきにくい反応ではありますが、硝酸から水が脱離することでNO2+ができることが分かれば、あとは酸(硫酸)を用いた脱水反応と同様の反応機構となります。

最後にニトロ化の反応機構を示します。

Bはブレンステッド塩基であり、ここでは水やHSO4-が作用します。

スルホン化

スルホン化も頻出の芳香族求電子置換反応です。求電子種として用いられるのはSO3H+。

この求電子種もNO2+と同様に活性が高く安定に存在することができません。

そのため発煙硫酸(硫酸と三酸化硫黄の混合物)中に平衡で存在するSO3H+を用います。

スルホン化の反応機構を以下に示します。

ハロゲン化

ハロゲン化も頻出です。

臭素のみでは活性が低く反応が進行しないためルイス酸として臭化鉄(Ⅲ)を利用します

臭素のローンペアを臭化鉄(Ⅲ)に供与することでBr-Br結合を弱め、活性を高めます。

以下にハロゲン化の反応機構を示します。

アルキル化、アシル化(Freadel-Crafts反応)

最後は芳香環にアルキル基とアシル基を導入するFreadel-Crafts反応についてです。

まずはアシル化から。

こちらも酸塩化物のみでは活性が低く、反応が進行しないためAlCl3を利用します。

酸塩化物中の塩素のローンペアをAlCl3に供与することでC-Cl結合が切断され、高活性なアシルカチオンを生成します。これが活性種となり以下に示す反応機構でアシル化が進行します。

続いてアルキル化。

こちらもアルキルクロライドのみでは求電子性が乏しく、反応が進行しないためAlCl3をルイス酸として用います

これにより生じたカルボカチオンに芳香族化合物が求核することで進行します。

フリーデルクラフツアシル化、アルキル化についてテストや大学院入試で問われるポイントをまとめた記事はこちら。

テスト、院試で問われるフリーデルクラフツ(Friedel-Crafts)反応のポイント | がんばる化学徒 (cocorosentaku.com)

以上4つの芳香族求電子置換反応を覚えればテスト対策としては十分だと思います。

覚えるべき3つの芳香族求核置換反応

続いて芳香族求核置換反応に移ります。

芳香族求核置換反応は芳香環がπ電子に覆われているため特殊な場合を除き起こりません。

ここでは大学院入試に頻出する3つの反応を紹介したいと思います

マイゼンハイマー錯体を経由する反応

1つ目はマイゼンハイマー錯体を経由する反応です。

脱離基(Cl基)に対してオルト位、もしくはパラ位に電子求引基(ニトロ基)をもつ芳香族化合物に対して、求核種(OMe基)が作用すると下図のようなマイゼンハイマー錯体とよばれる中間体を経由して反応が進行します。

以下に具体的な反応機構を示します。

ベンザイン中間体を経由する反応

続いてはベンザイン中間体を経由する反応についてです。

ベンゼン環に三重結合あるやんけ!!!って感じですよね。

ブロモ基やクロロ基などの脱離基のオルト位の水素が強塩基によって引き抜かれ、ベンゼン環内部に三重結合をもつベンザイン中間体が生成します。生成するといってもめちゃくちゃ不安定なのですぐにNH2-による求核攻撃によって結合が切れます。

ジアゾニウム塩の反応

3つ目はジアゾニウム塩を用いた反応です。

ポイントは窒素分子の脱離能の高さです。

以下に示すように窒素分子が容易に脱離することで不安定なカルボカチオンが生成し、これに対して水などの求核剤が求核攻撃します。

以上の3つが大学院入試に頻出します。しっかり押さえておきたい反応です。

まとめ

テストや大学院入試に頻出する芳香族求電子置換反応と芳香族求核置換反応をまとめました。これだけ覚えれば当該分野のテスト対策はばっちりです。

Follow me!