
記事の内容
- Wittig反応概説
- リンイリドの合成法
- リンイリドの安定性
- E-Z選択性
Wittig反応概説
Wittig反応はカルボニル基をオレフィンへと変換する反応です。カルボニル基は多くの化合物中に含まれており、これを有用なオレフィンへと変換できることから重要な反応です。
この業績により開発者のゲオルク・ウィッティヒは1979年にノーベル化学賞を受賞しています。

この反応はリンイリドがカギとなる反応です。イリドとは正電荷をもつヘテロ原子と負電荷をもつ炭素原子が隣接している化合物の総称で、ヘテロ原子としてリンが用いられている場合、リンイリドと呼びます。
リンの電気陰性度が2.1なのに対し、炭素の電気陰性度は2.5であるためこのような分極が起こります。
リンイリドはカルボニル基と上図のように反応し、オキサホスフェタン中間体を経由し所望のオレフィンへと変換されます。
ポイント
・P-O結合ができるように巻き矢印を書くこと
リンイリドの状態になることが分かればカルボア二オンからカルボニル基への求核が起こることは想像しやすいと思います。
問題は次です。私はこれが中々覚えられなかった記憶があります。
P-O結合は強い結合であるためこのような電子移動が起こります。同様の反応機構を示すものにVilsmeirer反応と呼ばれる反応があるためそちらと合わせて覚えると記憶に残りやすいかと思います。
リンイリドの合成法
Wiitig試薬は市販されているものも多いですが、自分で調整して使用することもできます。自分で調整できれば所望の置換オレフィンへと変換することができますしね。

反応はトリフェニルホスフィンと所望の構造をもったハロゲン化合物とのSN2反応によって起こります。その二つを適当な溶媒に溶かし熱を加えて混ぜませすれば真ん中の塩が生成します。続いてトリエチルアミンをゆっくり加えて数分攪拌することで塩がほどけリンイリドのできあがりです。
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リンイリドの安定性
リンイリドは置換基によって安定性が異なります。
- 安定リンイリド

カルボニル基やシアノ基といった電子吸引性基をもつリンイリドは安定イリドです。

理由は上記のようにイリドの負電荷が電子吸引性基に非局在化するためです。
- 不安定イリド

メトキシ基やアルキル基といった電子供与性基をもつリンイリドは不安定イリドです。

イリドの負電荷にさらに電子が供与されるためです。
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E-Z選択性
Eはトランス体、Zはシス体を意味します。Wittig反応では、リンイリドの安定性によって、E-Z選択性が変化することが知られています。
- 安定イリドを用いた場合
トランス体が生成します。理由は熱力学的支配によって反応が進行するためです。

- 不安定イリドを用いた場合
シス体が生成します。理由は速度論支配によって反応が進行するためです。

まとめ
カルボニル化合物からオレフィンを合成するWittig反応を紹介しました。イリドの安定性によってシス体、トランス体が選択的に得られます。また、ごみとなるトリフェニルホスフィンオキシドがでないような反応も開発されています。面白い!
最後に。。。。
覚えた反応機構は演習問題をたくさん解くことで効率的に身に着けることができます。
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