記事の内容
- Vilsmeirer反応の概説
- 反応例
- 実験手順
Vilsmeire反応の概説
Vilsmeirer反応は芳香環にホルミル基を導入する反応です。
ホルミル基(アルデヒド)は、還元によるアルコールへの変換、酸化によるカルボン酸への変換、グリニャール反応などのカルボニル基に由来する反応性を有することから、有用な官能基として知られています。
反応はまずVilsmeirer試薬を調整することから始まります。
Vilsmeirer試薬はPOCl3(塩化ホスホリル)とDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)により調整できます。
有機化学を勉強したての頃、この反応の反応機構が全然覚えられなかったことを覚えています。そこで以下にこの反応機構のポイントをまとめました。
ポイント
- P-O結合ができるように初めの巻き矢印を描く!
P-O結合エネルギーはとても強いのでこれが駆動力となって反応がスタートします。
有機化学ではNが求核したり、C=Oが求核されたりする反応が多くあるため、初めの電子移動がどのように起こるか想像するのが難しいかもしれません。(もっともDMF中のNには非共有電子対がカルボニル基へ非局在化しているため求核性はありませんが。。。)

とにかくPとOがでてきたらP-O結合ができるように巻き矢印を書くようにしましょう。
同様の反応にWiitig反応があります。あわせてご覧ください。
Vilsmeirer試薬が調整できたら芳香族化合物と混ぜましょう!イミン形成後に水を添加して加水分解することで所望のアルデヒドを得ることができます。

ポイント
- 電子豊富な芳香環は反応性が高い
この反応は芳香環とVilsmeirer試薬との芳香族求電子置換反応で進行します。これは求電子性を有するVilsmeirer試薬(イミニウムカチオン)に芳香環のπ電子が反応します。つまり芳香環の電子密度が高いほうが反応性が高まります。
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反応例
Downie, J et al. Tetrahedron 1993, 49, 4015.
Vilsmeirer試薬はDMFとPOCl3以外でも調整ができます。基質によって適した組み合わせがあるため、合成するときは一度目を通すといいです。上記の反応では、使用する反応剤によってo,p位の選択性を向上させることを報告しています。
実験手順
①Vilsmeirer試薬の調整
DMFを0℃に冷やし、POCl3をゆっくり滴下する。スケールにもよるが、mgスケールの場合、数分もすれば薄ピンク色に変化する。
②イミニウムカチオン形成
芳香族化合物をゆっくり滴下する。色の変化を楽しんで。
③ホルミル化
最後にイミンを塩基で加水分解したら終了。1M KOH aqを加えて室温で数時間混ぜたら出来上がり。基質によってはその後還流が必要な場合もある。(overnightで還流したら基質が死んだこともありますが。。。)
比較的反応操作が簡便なのでおすすめです!
まとめ
有用な官能基であるホルミル基を芳香環に導入する反応(Vilsmeirer反応)を紹介しました。
入試でも頻出の反応であるためぜひ反応機構までかけるようにしましょう。
最後に。。。。
覚えた反応機構は演習問題をたくさん解くことで効率的に身に着けることができます。
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